「大丈夫?」
子供の頃に友達がかけてくれたこのひと言が、
今の私の人生の始まりだったように思います。
大切にしてきたシールも執着してきたおもちゃも、
この目の前の友達に比べたら、
すべてが本当はどうでもいいことだったんだと気づきました。
それまで考えもしなかった、そのあまりの衝撃と嬉しさに、
涙が止まらなかったのを覚えています。
小学校5年生の頃のことでした。自分の本当の気持ちを理解してくれたり、
心配してくれることの優しさが、こんなに温かいものだと知ったのはその時でした。
生まれて初めて、嬉しくて泣いた瞬間でした。
たぶん、その友達はその時なぜ私が泣いているのか
理解できない様子だったと思います。
私もその時は、うまく説明できなくて、
ただ氷が溶けたみたいに泣いていました。
ありがとうの涙、だったんです。
小学2年生の時に1回か2回、
それ以来小学校時代に私は人前でほとんど泣いた記憶がありません。
今よりうんと冷めた子供でした。
周りにはただ自分勝手な子だと映っていたと思いますが、
本当はそれに加えて気が小さくて、甘えたがりで、寂しくて、
独りよがりで、我がままな子供でした。
そして、人に本当に自分の気持ちを分かってもらうことなんて、
とっくに諦めていました。両親は、私のことを世界一愛してくれていて、
それで充分でした。
だから、私がどんな気持ちなのかについて、
その時友達が心配してかけてくれた言葉に、本当に驚いたのです。
私なんて、人から心配されたりする人ではないと思っていたからです。
その子は誰からも好かれる子で、面白くて優しくて、
でもなぜかこんな私といつも一緒にいてくれました。
中学校では私がうんと遠くの学校に行って、それきりになってしまいました。
彼女は誰からも好かれるし、
彼女にとって私は取るに足らない友達の1人だと変な遠慮から、
こちらから連絡をすることもありませんでした。
そして、そのうちに疎遠になっていました。
今朝ふと、私は全然彼女に何にも返せていないなぁ、
彼女は今どうしてるかな?そんなことを思って目が覚めました。
本当に大切なことに、気づかせてくれてありがとう。
でも残念なのはそれから大学くらいまで、
自分が人にわかってもらうことに執着するばかりで、
結局私は、自分が人の気持ちを理解しようとすることに、疎かったのです。
それから心理学を勉強した時、そういうことだったのか!
とものすごく衝撃を受けました。
そして、私は本当は人の気持ちのことも、わかりたかったんだと気づきました。
それからちゃんと相手のことに寄り添うことができたら、
人の気持ちに、触れられることもわかりました。
昔自分がしてくれてあんなに嬉しかったこと、今、誰かに返せたらいいなぁ。